2007年 12月 06日
1-2 |
2.主人公はスーパー委員長(何だそりゃあ?)
「だ~か~ら~っ!」
弥生礼は立ち上がってテーブルに座っているたの委員たちをじろーっと見つめ回しながら、力一杯言う。
「今年の五月祭のテーマはこれで行くんですってばっ!」
バンっ!と叩きつけられたその手の下にある紙には、大きく【STOP HIV/AIDS】と書かれてあった。
カントリーロードは吉原市内に三店舗の展開をしている喫茶店で、ここPartⅢはウエスタン風の店内ですべてが木でできた装飾品で統一されている、他には無いお洒落で落ち着いたつくりである。各テーブル間は木の衝立(ついたて)で区切られており、ここの雰囲気を好む客も多い。
が、今日はここの一番大きなテーブル席を陣取って学生達が打ち合わせをしている。普通なら店主に咎(とが)められる時間の居座りに、大きなボリュームでの話し声でのやり取りであるが、春休み中の学生街は結構な閑期である上に、彼らが五月祭の実行委員である事、そしてここのマスターもこの学園都市の学校の卒業生である事から、いろいろと大目に見てもらえているのである。
数えるほどもいない周りの客のほとんどが学校関係者か学生だという事も理由のひとつでもあろう。
「いい?去年までのお飾りのテーマ、例えば【飛翔】だの【息吹】なんかじゃ新入生をぐっとこう掴めない訳。そこはいいわよね?」
「ああ、それはオレもそう思うし同感だ」
「でも、委員長。だからといってそれはあまりにも過激すぎないか?」
「私も確かにそれって大事なテーマだと思うけど、それを五月祭でする必要性があるの?」
「ちょっとまてよ、教育委員会やPTA、企業体へはどう説明するんだ?」
一通りネガティブな意見が出終わったのを確認して、礼は言った。
「…正直、五月祭でも遅いくらいなのよ。いい?」
礼は噛み砕きながら語りだした。どうやらこれまでは全て彼女の想定内のようだ。
「ここ吉原は学園都市という特殊な環境下だから新入生の三分の二以上が寮生や下宿生で成り立ってるでしょう?」
机上に円グラフが描かれた紙を出す。「ま、確かに」頷かざるを得ない委員たち。
「親元から一人遠くに来た子が多いこの時期、にわかカップルの増加が一番多いってデータが各校生徒会から非公式資料としてだけどここに出てるわ」
ぱらぱらと机に学校名を塗りつぶした形でだが、確かに月別行事別のわかりやすいグラフでまとめられた資料が掲示された。
「ほう」
「確かにこれは…」
「学園祭や修学旅行よりも多いの…か?」
「意外だわね」
そしてここで礼はおもむろにしゃがむや顔をテーブルに近付けて小声で言った。
「実はこれが一番のシークレットデータなのよ」
皆も自ずから顔を寄せ合い自然と無言になる。
「…」
「…」
「…」
「これをよく見て、そしてここを立ち去る時には絶対忘れてちょうだい。……他言は厳禁よ」
「…ゴクリ」
こっそりと礼が内ポケットから取り出したのは普通の手帳。しかし中にはとんでもないものが書かれていた。
「これは、学校医に相談があった小さなものから吉原市内全医療機関に届けられた患者に至るまで全ての医療記録から、当学園都市生徒だけをピックアップした妊娠件数と性病に罹(かか)った人数のリストなの。見てわかるように六月から七月にかけてが異様に多いでしょう?」
こうなると、もはや誰からも声は上がらない。
「……つまりはそういうことなの」
礼はこれ以上は言う事がないとばかりに、手帳を閉じ、座った。
「…」
「人恋しさのあまり、男も女も互いを求め合う、か」
「……わかったわかった、乗ったよ」
「ここまで見せられちゃあ下手なこと出来ないものね」
「しかしここまで俺たちにまで隠し続けてくるとは委員長も人が悪い」
口々に言い合う各部署長たち。でも顔には笑みが戻り、新たなやる気が出てきているようだ。
「…ねえ、委員長。」
「なあに?」
「もしかして、あなた全て根回し済みだったんじゃあ…あ、だからここまでのリスト類を…?」
「さあね」
礼はにっこりと笑うだけで、
「それより、頑張りましょうよね。今年のテーマはぶっ飛んでてもメインでやる事はあんまり変わらないんだから」
と、さらっと話題を逸らして言った。
「いいわね、教育委員会・PTA・企業体等は私に任せて、みんなは自分たちが出来る最高の事をやってちょうだい、信じてるから」
やれやれあんたにゃ敵わないねという感じで肩をすくめながら、各々カントリーロードから出て行こうとする。
「そうそう、各自、持ち場に戻って進捗の確認よろしく。次回の大会議は一週間後にココでだから忘れないでね」
取り敢えずここまで。このあとミカノちゃん登場。ひと悶着あって、その収拾までが1-2ですね。
#続きは別記事にするのでここの分はここによろしくです>関係各位(笑)。
「だ~か~ら~っ!」
弥生礼は立ち上がってテーブルに座っているたの委員たちをじろーっと見つめ回しながら、力一杯言う。
「今年の五月祭のテーマはこれで行くんですってばっ!」
バンっ!と叩きつけられたその手の下にある紙には、大きく【STOP HIV/AIDS】と書かれてあった。
カントリーロードは吉原市内に三店舗の展開をしている喫茶店で、ここPartⅢはウエスタン風の店内ですべてが木でできた装飾品で統一されている、他には無いお洒落で落ち着いたつくりである。各テーブル間は木の衝立(ついたて)で区切られており、ここの雰囲気を好む客も多い。
が、今日はここの一番大きなテーブル席を陣取って学生達が打ち合わせをしている。普通なら店主に咎(とが)められる時間の居座りに、大きなボリュームでの話し声でのやり取りであるが、春休み中の学生街は結構な閑期である上に、彼らが五月祭の実行委員である事、そしてここのマスターもこの学園都市の学校の卒業生である事から、いろいろと大目に見てもらえているのである。
数えるほどもいない周りの客のほとんどが学校関係者か学生だという事も理由のひとつでもあろう。
「いい?去年までのお飾りのテーマ、例えば【飛翔】だの【息吹】なんかじゃ新入生をぐっとこう掴めない訳。そこはいいわよね?」
「ああ、それはオレもそう思うし同感だ」
「でも、委員長。だからといってそれはあまりにも過激すぎないか?」
「私も確かにそれって大事なテーマだと思うけど、それを五月祭でする必要性があるの?」
「ちょっとまてよ、教育委員会やPTA、企業体へはどう説明するんだ?」
一通りネガティブな意見が出終わったのを確認して、礼は言った。
「…正直、五月祭でも遅いくらいなのよ。いい?」
礼は噛み砕きながら語りだした。どうやらこれまでは全て彼女の想定内のようだ。
「ここ吉原は学園都市という特殊な環境下だから新入生の三分の二以上が寮生や下宿生で成り立ってるでしょう?」
机上に円グラフが描かれた紙を出す。「ま、確かに」頷かざるを得ない委員たち。
「親元から一人遠くに来た子が多いこの時期、にわかカップルの増加が一番多いってデータが各校生徒会から非公式資料としてだけどここに出てるわ」
ぱらぱらと机に学校名を塗りつぶした形でだが、確かに月別行事別のわかりやすいグラフでまとめられた資料が掲示された。
「ほう」
「確かにこれは…」
「学園祭や修学旅行よりも多いの…か?」
「意外だわね」
そしてここで礼はおもむろにしゃがむや顔をテーブルに近付けて小声で言った。
「実はこれが一番のシークレットデータなのよ」
皆も自ずから顔を寄せ合い自然と無言になる。
「…」
「…」
「…」
「これをよく見て、そしてここを立ち去る時には絶対忘れてちょうだい。……他言は厳禁よ」
「…ゴクリ」
こっそりと礼が内ポケットから取り出したのは普通の手帳。しかし中にはとんでもないものが書かれていた。
「これは、学校医に相談があった小さなものから吉原市内全医療機関に届けられた患者に至るまで全ての医療記録から、当学園都市生徒だけをピックアップした妊娠件数と性病に罹(かか)った人数のリストなの。見てわかるように六月から七月にかけてが異様に多いでしょう?」
こうなると、もはや誰からも声は上がらない。
「……つまりはそういうことなの」
礼はこれ以上は言う事がないとばかりに、手帳を閉じ、座った。
「…」
「人恋しさのあまり、男も女も互いを求め合う、か」
「……わかったわかった、乗ったよ」
「ここまで見せられちゃあ下手なこと出来ないものね」
「しかしここまで俺たちにまで隠し続けてくるとは委員長も人が悪い」
口々に言い合う各部署長たち。でも顔には笑みが戻り、新たなやる気が出てきているようだ。
「…ねえ、委員長。」
「なあに?」
「もしかして、あなた全て根回し済みだったんじゃあ…あ、だからここまでのリスト類を…?」
「さあね」
礼はにっこりと笑うだけで、
「それより、頑張りましょうよね。今年のテーマはぶっ飛んでてもメインでやる事はあんまり変わらないんだから」
と、さらっと話題を逸らして言った。
「いいわね、教育委員会・PTA・企業体等は私に任せて、みんなは自分たちが出来る最高の事をやってちょうだい、信じてるから」
やれやれあんたにゃ敵わないねという感じで肩をすくめながら、各々カントリーロードから出て行こうとする。
「そうそう、各自、持ち場に戻って進捗の確認よろしく。次回の大会議は一週間後にココでだから忘れないでね」
取り敢えずここまで。このあとミカノちゃん登場。ひと悶着あって、その収拾までが1-2ですね。
#続きは別記事にするのでここの分はここによろしくです>関係各位(笑)。
by hk-club
| 2007-12-06 13:04
| A SUITOR