2007年 09月 03日
1.輝く喫茶店(その1) |
部屋の掃除をして、出てきた未完原稿。しかしこれは主人公が大学生ですね。書き直し前にちょっとだけ掲載。
梅雨にしては、珍しい上天気の土曜日。
近隣に複数の学校を持ち、その学生達で溢れかえる、喫茶店『カントリー・ロードpart2』。
礼--弥生礼は、図書館の空調装置が点検中の為に、涼を得ようとここに来た。
だから、向かいの席に(勝手に)座り込んでいる幼馴染みの真--風野真など頭から無視して(というか気付いていないのだろう)、一生懸命に卒業論文の下準備をしている。
もっとも。ここに来てからずっと、
--もうすっかり、アイスコーヒーがおいしい季節になったなぁ…… そろそろ、夏季休暇かぁ…… 今年で大学卒業だから、旅行もしたいなぁ…… 問題は、海と高原のどちらが良いかだよな……
など考えを巡らすだけの平和な真にとっては、そんな事は大した問題ではない。
「礼は海と高原のどっちがいい?」
「あ、そうだ、富山教授が捜していたわよ」
ようやく真の存在に気付いた礼は、彼への伝言を思い出し、視線だけをチラッと向けそれだけを簡潔に伝えると問いかけには答えずに、自分の作業に再び没頭した。当然その間も手は止まっていない。
「そろそろ限界かな、な」
「? どういう事なの?」
真の発言を不思議に思った礼は、ようやく手を止めて真の方を見た。
真は悠然とした態度でアイスコーヒーを飲み干してから答えた。
「だって、俺まだ、卒論のタイトルも、内容、テーマすら提出して無いんだもん」
「……単なる馬鹿ね」
礼は表情も変えずにきっぱり言い切った。
見捨てられた真は思わず
「何を言う。俺はなぁ、お前よりも1歳年上で偉いんだぞー」
と言いながら、テーブルの上にある礼の原稿を自分の方に寄せ始める。
「卒論なんか、すぐにできるんだぞぅ」
その光景に、三秒ほどあっけに取られて見ていた礼は、思わず大声で怒鳴りつけた。
「さっさと、今すぐに、富山教授のトコロに行きなさいっ!」
その礼の迫力に「これはやばい」と思った真は、
「れーーい、それじゃぁ、後で助け舟よろしーーくぅーーっ」
との声を店中に響かせて、慌てて飛び出して行く。
一人取り残された形の礼は、みなの注目を感じて慌てて下を向き、
「あの教授、どうりで白髪が増えた訳だわ……」
とか、
「ったくもう、T・P・Oってものを考えないんだから……」
などと、自分の事は棚に上げて、一人赤面しながらブツブツと愚痴っていた。
だから。
飛び出していった真とすれ違いに入ってきた女の子に、そんな礼が気付かないのも当たり前であろう(もっとも礼が下を向いてなくとも、辺りの事にまで気が回る精神状態だったとは思えないが)。
ただ、その女の子は可愛いだけでなく、普通以上に目を引く容姿をしており、実際店内の(礼以外の)お客は-すれ違った真もまた-、その姿に驚嘆していたのだが。
梅雨にしては、珍しい上天気の土曜日。
近隣に複数の学校を持ち、その学生達で溢れかえる、喫茶店『カントリー・ロードpart2』。
礼--弥生礼は、図書館の空調装置が点検中の為に、涼を得ようとここに来た。
だから、向かいの席に(勝手に)座り込んでいる幼馴染みの真--風野真など頭から無視して(というか気付いていないのだろう)、一生懸命に卒業論文の下準備をしている。
もっとも。ここに来てからずっと、
--もうすっかり、アイスコーヒーがおいしい季節になったなぁ…… そろそろ、夏季休暇かぁ…… 今年で大学卒業だから、旅行もしたいなぁ…… 問題は、海と高原のどちらが良いかだよな……
など考えを巡らすだけの平和な真にとっては、そんな事は大した問題ではない。
「礼は海と高原のどっちがいい?」
「あ、そうだ、富山教授が捜していたわよ」
ようやく真の存在に気付いた礼は、彼への伝言を思い出し、視線だけをチラッと向けそれだけを簡潔に伝えると問いかけには答えずに、自分の作業に再び没頭した。当然その間も手は止まっていない。
「そろそろ限界かな、な」
「? どういう事なの?」
真の発言を不思議に思った礼は、ようやく手を止めて真の方を見た。
真は悠然とした態度でアイスコーヒーを飲み干してから答えた。
「だって、俺まだ、卒論のタイトルも、内容、テーマすら提出して無いんだもん」
「……単なる馬鹿ね」
礼は表情も変えずにきっぱり言い切った。
見捨てられた真は思わず
「何を言う。俺はなぁ、お前よりも1歳年上で偉いんだぞー」
と言いながら、テーブルの上にある礼の原稿を自分の方に寄せ始める。
「卒論なんか、すぐにできるんだぞぅ」
その光景に、三秒ほどあっけに取られて見ていた礼は、思わず大声で怒鳴りつけた。
「さっさと、今すぐに、富山教授のトコロに行きなさいっ!」
その礼の迫力に「これはやばい」と思った真は、
「れーーい、それじゃぁ、後で助け舟よろしーーくぅーーっ」
との声を店中に響かせて、慌てて飛び出して行く。
一人取り残された形の礼は、みなの注目を感じて慌てて下を向き、
「あの教授、どうりで白髪が増えた訳だわ……」
とか、
「ったくもう、T・P・Oってものを考えないんだから……」
などと、自分の事は棚に上げて、一人赤面しながらブツブツと愚痴っていた。
だから。
飛び出していった真とすれ違いに入ってきた女の子に、そんな礼が気付かないのも当たり前であろう(もっとも礼が下を向いてなくとも、辺りの事にまで気が回る精神状態だったとは思えないが)。
ただ、その女の子は可愛いだけでなく、普通以上に目を引く容姿をしており、実際店内の(礼以外の)お客は-すれ違った真もまた-、その姿に驚嘆していたのだが。
by hk-club
| 2007-09-03 11:12
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